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2013年2月1日金曜日

「育児のヒントと正解」

 皆様の育児の参考にしていただけたらと、『育児のヒント』を記載しています。
 今回は、湘北短期大学保育学科教授 鈴木弘充 先生です。


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 「ヒント」とは、「問題を解く手がかり」ですが、育児には正解がないので、これといったヒントは出せないのではないかと思います。しかし、世の中には自信を持って「正解」を示して、「そのためにはこうしなさい」といったヒントを提供する人もいます。もしその正解が「親の思い通りに子どもが育つこと」だとすると、そのヒントは子ども本来の発達を歪めるものになりかねません。子どもの成長過程において、 親の都合やちっぽけな価値観を越え、思惑からはみ出していくことは、困っているのなら別ですが、思い通りではないからといって、ヒントの必要な問題ではないでしょう。 

 私は、教育・保育関係の式典や会合に出席することがあるのですが、主催者や来賓の挨拶を聴いて、暗い気持ちになったことが、おぼえているだけでも最低 4 回あります。その内容は「自分の子どもは、順調に立派な大人に育ちました(職業を言う方も多いです)。子育て中の皆さん、今は大変でしょうが、がんばってください。」といったものです。励ましの気持ちからの言葉であろうとは思いますが、育児の成功(正解)を得たかのような「育児の先輩」の言葉に違和感を持ったものです。 

 また、ネットで「抱き癖」を検索すると、泣いている赤ちゃんを抱っこして、「抱き癖がつく」ことを義母 や夫に指摘された、若い母親からの質問と回答がたくさん出てきます。指摘した人は育児のヒントを提 供しているつもりでも、母親を不安にさせ、ネット上のヒントに安心を求めさせる結果となっています。 

 このように、昔からの言い伝えや自分の「成功」経験からの育児論、ネット上の情報など、ヒントが溢 れていますが、安心を与えてくれるものだけでなく、不安にさせるものも少なくありません。その中でも 深刻なのは、専門家や権威が、間違った科学的根拠を背景に、正解やヒントを押しつけてくることです。

 かつて、厚生労働省は、保育士資格の必修科目の中で、狼に育てられた少女の例をあげて乳幼 児期の養育の重要性を教えることを、授業の例として示していましたが、「狼少女」はでっち上げとする説が優勢です。そのせいか、この記述、今はありません。早期教育の重要性と母親の役割の大切さを説いた、ある育児書にもこの「狼少女」が取り上げられていますが、母親向けで、一度世に出てしまったものは 簡単に訂正できないという点で、より深刻です。


 もし、頼みもしないのに、育児の正解やヒントを押しつけられて不安な気持ちになったら、信頼できる人に訊くか、ネットで検索しましょう。ネットの書き込みには、嘘や間違い、偏った主張がたくさん見られますが、 それは「専門家」も同じです。正解はありませんが、安心できる、しっくりくる、腑に落ちる、これならできそう、試したい、と思える自分に合ったヒントを見つけましょう。

                             鈴木 弘充